今日は、3月11日(水)。
14年前の今日、東日本大震災が発生しました。
発生したのはマグニチュード9.0、最大震度7の大地震。
地震はもちろんですが、その後発生した津波による被害/犠牲も大きいものでした。
また、発生した被害/犠牲は、地震と津波が直接作用したものだけではありませんでした。
福島県の原子力発電所を大津波が襲ったことで、発電所全体が全電源喪失。
それが原因となって、原子炉での ”メルトダウン/水素爆発” 事故が発生。
この原子炉事故よる影響は非常に大きく、現在に至るまで、周辺の市町村の復旧/復興を困難なものにしています。
東京電力の福島第一原子力発電所には、1号機から6号機まで6つの原子炉があります。
このうち1号機、2号機、3号機がメルトダウンを起こし、さらに1号機と3号機で水素爆発が発生しました。
2号機も、1号機/3号機と同様メルトダウンになったのですが、水素爆発はしませんでした。
ただこれは、他の原子炉の水素爆発で2号機建屋の壁/屋根が吹っ飛んでしまい、2号機の建屋に水素が溜まらなかっただけ。
なので、全電源喪失/メルトダウン/放射性物質の飛散…という深刻さは、1号機/2号機/3号機とも同じ状況でした。
現在東京電力では、5号機と6号機の2つは実験用として残すことを検討していますが、1号機〜4号機の4つは廃炉とする方針です。
ただ、この ”廃炉” にする作業/行程も、一筋縄ではいかないものなんですけどね…
原子力発電所がすべての電源を喪失した原因は、発電所の全域が10m、場所によっては15mを超える津波に襲われたことです。
発生した大地震の影響で、まず外部から取り入れている商用電源がすべて失われました。
ただ実はこのタイミングで、非常用ディーゼル発電機は稼働しました。
しかしそこに、大津波が襲いかかります。
大津波は、発電所にある様々な安全装置/重要設備を破壊。
そして、稼働していた非常用ディーゼル発電機まで浸水/破壊を受けてしまった…
これが致命でした。
地震発生直後は、非常用ディーゼル発電機が稼働しており、その電気を使って、原子炉に冷却水を送るポンプが動いていました。
しかし津波の被害により、ディーゼル発電機が停止…からの冷却水のポンプが停止。
これにより、原子炉内の燃料棒を冷やすことができなくなり、その結果メルトダウン/水素爆発の事故が発生してしまいました。
とはいえ、原子力発電所を設計した際に地震や津波の発生が想定されていなかった訳ではありません。
もちろん、ある程度の規模の地震/津波を想定した上で、施設/設備の設計が行われていました
ただし、設計時に想定した津波の高さは6mほど。
うーん、いかにも低いです。
結果論ではなく、この津波の高さの想定って、素人の私から見ても低すぎる…
そう感じます。
というのも、江戸の昔から、東北地方、とくに三陸沖では大地震/大津波の被害が度々発生しており、
「発生した津波の高さは、山のお宮の鳥居の基礎まで届いた」
そんな言い伝えがあることは、私でも知っていたりします。
そして、その”お宮の鳥居の基礎” の高さは、じつに海抜20m以上…
その言い伝え通り、東日本大震災の際に発生した津波は非常に大きく、福島第一発電所を襲った津波は、東京電力が想定していた6mの2倍以上の高さでした…
「想定した津波の高さが低すぎた/発生した津波の高さが想定を超えていた」…
これはその通りなのですが、真実はそんな単純ではないようです。
実は東京電力では、2008年の時点で、すでに地震により発生する津波の高さが、15mを超える可能性があることを認識していました。
ただ、その対応を ”先送り” してしまった…
そんな経緯があったことが、後に世間に知られることになりました。
2008年に東京電力の ”子会社” が地震で発生する津波の高さの再計算を行い、
「最大で15.7mの津波に襲われる可能性がある」
ということを、東京電力に報告していました。
上記の津波の高さの計算は、日本政府の地震調査研究本部が出している長期評価というデータに基づいて行われました。
そして、”2008年時点で東京電力は把握していた” という事実は、2012年〜2013年の東京地検の捜査により判明。
その後、2017年〜2019年に開催された公判の捜査記録として、この事実が公開されます。
その時点で初めて、一般の人々が、上記の経緯を知ることになりました。
実は東京電力では、2008年に子会社が行った津波の再評価結果を受け、本店の土木関係部門が、15.7mの津波を想定した防波堤/防潮堤の建設工事の実施を検討しました。
しかし、経営層/原子力関係部門がこれを ”先送り” する判断を行い、その結果、15.7mの津波を想定した防波堤/防潮堤の建設は行われなかった…
そんな経緯があったんです。
「悪い知らせや情報ほど、早く報告/対処すべき」
これが、私が社会人になって学んだ最も重要なことのひとつです。
東京電力のお偉いさんは、私でも学んでいるような教訓/鉄則を、学んでいなかったんでしょうか…
2017年〜2019年には、東京電力が ”先送り” との判断をしたことの刑事責任を問う裁判が行われました。
この裁判では、当時の経営陣3人が起訴されましたが全員が無罪となっており、その判決が確定したように思います。
”先送り” をしたことについて刑事責任を問うことができるのか…
正直言って私には分かりません。
しかしその有罪/無罪はともかく、
・東京電力のお偉いさんともあろう方が、
・安全上の重要な判断を ”先送り” にしてしまったことで、
・地震により発生した津波から発電所を守ることができず、
・大きな原発事故が発生してしまった…
これは、”その通り” という印象です。
ということは、刑事責任には問うことはできなくても、
・”先送り” をしたことの道義的責任はあり、
・それは民事上の不法行為に該当する…
つまり民事裁判を行えば、
・東京電力のお偉いさんにも、
・事故により発生した損害の、
・賠償責任を認めてもらえる可能性がある…
と感じます。
いや、そんな裁判をするかどうか、そこはまた別の話ですけど…
地震で発生した津波が6m以下だったら、この原発事故は起きませんでした。
そのときは東京電力、そして ”先送り” した経営陣も、
「良くやった/いい判断だった」
と褒められたかもしれません。
しかし現実は、そうではありませんでした。
どんな不都合なことでも、どんなに不愉快なことでも、そこから目をそらさず判断を ”先送り” にしない。
その覚悟/勇気を持つ。
それを噛み締める3月11日にしたいと思います。